yelloween &Casa Blanca
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帰宅すると二階の廊下の角に、見慣れない大ぶりの花瓶が置かれていた。
朝、涼介が出掛けるときは確かになかったそれには、二本の大輪の花が仲良く寄り添って挿してあった。
「見事だな……」
濃厚な匂いを放つその花の分厚い花びらにそっと触れて、涼介は目を細めた。花心は特にないが、いいものだというのは分かる。
花瓶は押入に仕舞ってあった筈の頂きもので、いかにもあわてて出したのが分かる。その証拠に、うっすらと埃をかぶったままだ。
黄色の百合と、白の百合。
共につぼみを幾つか率いたもので、今が頃合の満開が一輪ずつ。
その満開同士が綺麗に寄り添っている。
誰がしたのかなんて、訊かなくても分かる。
(啓介にしちゃ、いいセンスだな)
涼介はふっと笑った。ただし、この花瓶だけはいただけない。柄がどうも古くさい。
「ずいぶんと少女趣味だな、あいつも……」目を細め笑った。
ジーンズの中の携帯が震えた。
引っ張りだして開くと、朝から何十通目かの、涼介の誕生日を祝う内容のメールがまた届いていた。
日付が変わってすぐ、最初に送ってきたのは大学でいつも行動を共にする友人で、それを皮切りに史浩、拓海、レッドサンズのメンバー、行きつけにしているカーショップ……色々な人間からのお祝いメールがひっきりなしに涼介の携帯に届いた。
文面に多少の差こそあれ、”お誕生日おめでとう”という内容のメールだった。デコレーションメールや涼介が好きな歌手の歌詞を引用した格好を付けたもの、赤城の山からの見事な景色の写真を添付したものもあり、朝から飽きることはなかった。
祝って貰うのが嬉しい子供でもないが、祝われて悪い気はしない。
特に意味もなくメルアドに誕生日を入れていたのも、今日のお祝いメールの数につながっているようだ。
「……啓介、」
まるで涼介がこの前にたつのをどこかで見ているかのようなタイミング。
今頃大学の友人と飲んでいる筈の啓介からのメールだった。
Happy Birthday アニキ!
それ、オレとアニキみだいだろ?
「……ああ、確かにそうだな」
シェルを畳み、涼介は目の前の二本を見た。
黄色が白を護っているように咲いていた。
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カウンター8687(ハロー、花)・さな様へ
テーマ・お花
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