居酒屋のカウンター席の隅で、涼介は隣の文太に気づかれぬよう、小さくため息をついた。
隣の文太は、駅前で配っていたチラシに釣られて入った店が存外に雰囲気、味、共に良かったことに機嫌が良かった。
酒は杯を重ね、料理に舌鼓を打っている。
この店は繁盛しているらしく、金曜の夜ということもあって客が溢れ、立って待っているグループもいる。
(……オレの気も知らないで……)
涼介は自分が提案した店を文太が気に入った事は素直に嬉しかったが、反面、上機嫌な文太に対する不満もあった。
心の中で拗ねて、でもそれを顔に出すまいと涼介なりに努力はしていた。


糸海苔がふんだんに乗った出汁巻きをほおばり、涼介は横目で文太を見た。
グラスに口を付けたまま、少し赤い顔をした文太の目線はカウンターの一段高い所に並んだ大鉢の、金平牛蒡に向いている。
「お父さん、金平頼みましょうか?」
「ん? ああ、」
少し嗄れた声が返事をした。予想通り食べたいと思っていたようだ。
さっき大将が炒め上げたばかりの笹掻きを盛り上げた大鉢からはまだ湯気が立ち上っていて、甘辛い香りが漂ってくる。
「すみません、金平と中瓶一つ」
瓶ビールも空に近かったから、一緒に頼んだ。涼介がカウンターの向こうの大将に言うと、「あいよ」と威勢のいい返事が返ってきた。他にはと涼介が目を配ると、刺身はまだ残っている。豆皿の醤油がだいぶ減っていたので継ぎ足し、空になった文太のグラスに残りのビールを酌した。
一本しかない焼き鳥は別の皿に移して空になった皿を戻し、新しい料理に備え場所を空けた。
油っぽい料理が続いているからさっぱりしたものもと思い、「酢味噌和えもどうですか」と訊くと文太からはやはり頷きが返ってきて、それも注文した。
「あ、」
涼介のジーンズの尻ポケットで、携帯が震えた。
「すみません、ちょっと電話……」
「ああ」
文太に断りを入れ、涼介は携帯を取り出し耳に当てながら席を立ち、店外に出た。


「さっきから見てたけど息子さん、よく気がつくね」
皿に盛った金平と瓶ビールを文太の前に置きながら、大将が笑った。
「……ん、ああ……まぁ、な」
文太は曖昧に答えた。
涼介と一緒にいれば、大抵の人間は息子さんですかと訊いてくる。
最初はむきになって否定していた文太だったが、バイトだと説明するのは案外面倒だった。
バイトをあちこち連れまわすんですか? と逆に藪蛇になることも多かったからだ。
だから最近は向こうから言われれば、あえて否定はせず、曖昧に肯定し、当たり障りのないことだけを答えている。
「あんな気ぃつく息子さん、なかなかいないね」
「そうかね……」
確かに、気は利くやつだと文太は思った。
豆豆しく文太の世話を焼くところは、息子というよりは女房に近いかもしれない。
逃げた女房も大概気がつく方だったが、涼介は多分彼女以上だ。尤も、文太限定だが。
「随分男前な顔してるけど、息子さん……モデルさんか何か?」
「いいや。ただの大学生だよ」
「へぇ。大学、どちら?」
「群大」
「ほぉー、そりゃ良く出来るんだねぇ、自慢の息子さんじゃないか、御主人」
「いや……」
苦笑いをし、新しい瓶を手酌した。
自慢かどうかはわからない。息子といっても、血に繋がる息子ではなく、縁に繋がる息子でもなく、情に繋がる息子だ。
文太はまるで自分が涼介を育てたかのように返事をしてしまったと気づき、(やっぱりバイトっていうべきだったかな)と軽く後悔した。

店の外で、涼介は電話の相手と打ち合わせをしていた。
「うん、……それで良いと思うぜ」
『ありがとうございます、涼介さん』
「こっちこそ、二軍をしばらく見に行けてなくて悪いと思ってる。タイムのリストは見せてもらったんだが、全体的に底上げされているな。いい傾向だ。特に、宮永と広井の上達が目覚しいな」
『ええ、二人は特に熱心ですから』
「なるほどな。……二軍は他のチームとも上手くやってるようで、何よりだ」
『ありがとうございます』
涼介はさっきまでの拗ねていた息子の顔から、レッドサンズのリーダーの顔に戻っていた。電話の相手は、レッドサンズの二軍を任せている男だ。
『じゃあ、昇格タイムレースはその日程でやらせてもらいます。時間があったら、是非見に来てください。みんな、タイムを大幅に上げましたから』
「ああ……わかった。できるだけ時間を作る」
二軍から一軍への昇格を掛けたタイムレースの段取りを、彼は涼介の知らない間にきれいに形作ってくれていた。
通話を終え、涼介は今度は気がねなくため息をついた。
「……ふぅ、」
シェルを畳んだ携帯を尻ポケットに再び仕舞う。
安堵と、文太の前では隠していた不満の篭もったものだ。



店は大通りに面していて、人通りも多い。
通りすがりの女子高生たちが涼介を見て、何かをひそひそと言っている。
(つまらないな……)
涼介はもう一度ため息をついた。もう、「息子」の顔に戻っていた。


ここ二週間ほど、文太と触れ合っていない。
それが涼介の不満とため息の理由だった。


涼介の大学が忙しかった。
プロDの遠征があった。
遠征後のホームページの更新に、思いの外時間がかかった。
史浩の仕事が忙しく、次の遠征の段取りを何から何まで涼介が決める羽目になった。
文太が軽い風邪を引いた。今日もまだ、声が少し嗄れている。
そんな用事やハプニングが折り重なるように二人の上にふりかかり、気づけば二週間、文太とはキスもなにもしていなかった。
今日こそは、とこの店に来る前に涼介が強請ると「体調が万全じゃねえし、お前に風邪を移しちまうぞ」と冷たくあしらわれた。
文太の嗄れた声と少し削げた頬に、それ以上は言えなかった。
その割りに飲みに出る元気はあるのだ。たちが悪いな、と涼介は店の外のベンチに座った。
しつこく強請って根負けさせたかったが、まだ万全でない証拠の文太の声が、涼介に珍しく遠慮をさせた。


潤みは吸い上げるスポンジを欲していた。
疼きは慰めを求めていた。



店に戻ると、涼介は席にはつかずそのまま「お手洗い」の表示のある方へと向かった。
「ん……?」
居並ぶ客の肩越しにそれを見た文太は、予感を心に抱いていた。
コトン、とグラスをカウンターに置いた。
(アイツ……)
涼介の横顔が、何をするかを語っていた。


涼介が表示の行き先にあった小綺麗なトイレにはいると、洗面台の前でサラリーマン風の中年とすれ違った。
個室はいくつかあったが、全てあいていた。
一番奥の個室に吸い寄せられるように入ると、内側から鍵を閉め、冷たいタイルの壁にもたれ掛かった。
「……は……ぁ、」
吐いた息が切ない。
音をさせないようにジーンズのベルトとボタンをはずした。
下着ごと膝まで一気に下ろすと、ぴん、と勢いの良い涼介自身が天を仰いで跳ねあがった。
先走りが鈴口からとろりと垂れ、堅く勃起している。
自分自身のそんな姿に、涼介はゴクリと息をのんだ。
(もう二週間も、お父さんとしてない……)
これまでにも二週間くらい、お預けはあった。やはり同じような理由が重なった結果だ。
けれど、セックスとまでは行かなくともキスくらいはしたし、一緒に風呂に入ったり、文太の腕枕で昼寝をしたり、涼介が文太自身を口淫したり、文太が涼介自身を手淫してくれたりと、何かはあった。
全くなにもなかったことはなかったのだ。
それが、今回は何もない。
今勃ち上がっている涼介自身を、文太はここ二週間、触れてもいないし見てもいない。
(このままもう触れてくれないのか……もしかして飽きられた……?)
いくら涼介の顔が綺麗でも、男の顔だ。
身体だって、中で遠慮なく出しても妊娠しないといっても、女のように柔らかくはない。
そんな極論にまで話が飛躍して仕舞うほど、涼介は欲求不満だった。
(いやだ、そんなの……!)
かぶりを振ると、涼介はワイシャツの裾から片手を差し入れ、胸の突起に触れた。
「……っ……!」
堅く勃ちあがった小さな突起はとても感じやすかった。
ひっかくようにそれに触れると、涼介の背筋を電流のような快感が走った。
(あ……っ、すご……)
もう片方の手は、涙を流す涼介自身の茎を握った。熱い、そして堅い茎。
そろりとしごき始めると、そこからも快感が生まれ、涼介の身体を、頭を支配していった。
(……っ、……気持ちいい……)
この二週間、文太と触れあえず何度こうしたことだろう。
確かに自慰は気持ちいい。自分の身体は自分が一番よくわかっているからだ。
乳首を摘み、転がし、指先で意地悪くつぶすように力を込めると、願っていたとおりの快感が得られる。
けれど所詮は予定調和だ。
文太が触れてくれるとき以上の快感は、心の充足感は得られない。
(お父さん、……)
肉茎を激しくしごき、すぐそこにまで迫っている快感の頂へと一気に上り詰めていく。
(お父さん……っ、お父さん……!)
声に出さず文太を呼ぶ涼介の頭の中には、最後に抱き合った日の、文太の逞しい背中が浮かんでいた。
汗ばんだそれにすがりついて、大好きです、と何度も言ったこと。
風呂場で自分で入り口を開くように言われ、恥ずかしがりながら文太に見せつけるようにそうすると、何本もの指が入り込んで自在に涼介の中を泳いで、タイルの床に吐精したこと。
あの日から、もう二週間。


(お父さんが欲しい……!)


「涼介」
ドアの外でした声に、涼介はハッとした。
(お父さん……?)


「出てこい」
狭いトイレに響く声は、確かに文太のものだ。
静かだが、何かを秘めたような声に涼介の鼓動が早まった。
涼介は慌てて身なりを整え、まだ堅く勃起したままの自身を無理矢理ジーンズに押し込め、トイレットペーパーを少し引っ張り出し、便器に落としてレバーを踏んだ。


「……はい、」
ドアを開けると、怒ったような文太が腕組みをして待っていた。
「何してた」
「……用を、足してました」
きまり悪そうに文太から視線をそらし、涼介は答えた。
水音が続いている。
「用って、何だ」
「……何いってるんですか、お父さん。個室だから大きいほうですよ」
「嘘つけ」
きっぱりと言われ、涼介は息を呑んだ。
「……見え透いた嘘付くんじゃねえよ」
水を流す音が終わり、文太はふん、と涼介に背中を向けた。


「嘘付くヤツとはもうシねぇぞ」


「……!」
その言葉に、涼介は心の底からどきんとした。
「帰るぞ」
文太がトイレを出た。
「あ……、待って、」
涼介は手を洗い、慌てて文太の後を追った。



店に戻ると文太はレジで支払いをしていた。
席に置いたままの2人分のコートを手に取りながら、涼介は焦った。
(お父さん……気付いてたんだ……)
涼介が店のトイレで自慰をしていたことを、文太は分かっていたのだ。用を足していたと嘘をついた涼介に怒っているのだ。
(ばれてたんだ……)
涼介のほうを見もせずに店を出る文太を、コート二枚を持った涼介がまた追った。


「ごめんなさい、お父さん」
店を出て繁華街を歩く文太に、涼介が追いついて並んだ。
怒った様子の文太に話しかけたが、文太は涼介を見ようとはしない。
「あの、オレ……」
大股でずんずんと歩く文太は、ポケットに手を突っ込み前を向いたまま無言だ。
「お父さん、」
前から数人のサラリーマンが歩いてきて涼介にぶつかりそうになり、「あぶねぇ」と言われ、謝った。
その隙に、文太が随分と先に行ってしまった。
「お父さんっ」
サラリーマンに謝った涼介が再び駆け寄り、文太に並ぶ。
「ごめんなさい、嘘付いて……」
「……」
「お父さん、」
文太を怒らせたことに焦りを隠せない涼介が何度となくお父さん、お父さんと呼びかけたが、文太はずっと無言のままだ。
時折すれ違う人が、必死な様子の涼介に何事かと振り返る。
(どうしよう……お父さんを怒らせてしまった……)
手にした二枚のコートをぎゅっと握り、涼介は文太がもう触れてくれないのかもしれない、と覚悟した。


人通りの多い繁華街を抜け、一膳飯屋の並ぶ細い路地に入った。


その中ほどまで、涼介はお父さん、ごめんなさいを無言の文太に繰り返し話しかけていた。
「あの、おとうさ……」
何十回目かのお父さん、の途中で文太が立ち止まった。涼介も立ち止まった。
そこは茶漬け屋の空き店舗の前だった。
「――涼介」
そして、やっと涼介のほうを向き、ひと呼吸の後、彼の名を呼んだ。
「はい……」
手にした二枚のコートをぎゅっと抱き、涼介は恐る恐る返事をした。



「さっきトイレでやってたこと……家帰って、オレの前でしてみせろ」



ご褒美と戒めは、この場合同じ意味だ。
二週間ぶりに、小さな豆腐屋の二階の四畳半は湿った、淫らな空気に支配され、下のほうが少し罅割れた壁が涼介の喘ぎに震えた。
文太のタバコの煙がうっすらとその空気を白く濁らせた。
深く吸い、フゥ、と吐き出しながら、文太は胡坐をかく自分の前、畳の上で痴態を見せる涼介をじっと見ていた。
さっき居酒屋のトイレでしていたことを、目の前で再現させた。
用を足していただなんて見え透いた嘘。
トイレに向かう涼介の横顔が、性の色に染まっていた。
文太がトイレに入ると、それが証拠に一番奥の個室からは殺した息が漏れ聞こえていたのだ。
「ッあ……は……ァ…!」
仰臥し、脚を大きく広げ、涼介は片手で勃起した自分自身を扱いていた。
若い雄は先走りをとろとろと流し、涼介の手はすっかりべとついていた。
もう片手は肌蹴たワイシャツの前あきから胸へと、小さくしこった乳首を摘まんでいる。
脱ぎ散らしたジーンズと下着が部屋の隅で行儀悪くはらわたを見せていた。
「ひ・ッ、……んぁっ……、あ……いぁあっ……!」
さっきとは違って声も遠慮しない。立てた膝の間でせわしなく動く涼介の手は、可哀想なほど堅くなった肉茎をくるみこみ、自らが流した先走りを潤滑液に、追い求める快楽のてっぺんを目指している。
フゥ、と最後のひと吸いをした文太は、畳に置いた灰皿に短くなった白を押しつぶした。
「涼介、」
喘ぐ涼介に声をかけたが、涼介は文太の目の前での自慰という倒錯的な行為の齎す快楽に没頭し、文太の呼びかけは耳に入ってはいないようだ。
「あぁ……や、……ぁん、出そう……ぁ、」
立てた膝がじれったそうに震えだした。
文太は涼介の上に影を作り、「出そうか?」と問うた。
コクコク、と涼介が頷く。
「チンポから……いっぱい出んのか?」
再び問うと、また頷く。
「お父さんに……見られながら……ッ、出そう……」
「そうか」
「お父さん……触って……ぁっ、」
潤んだ目が文太を映し、途切れ途切れの声でそう言われると、万全でない体調のために涼介とは性的な接触を控えようと思っていた文太の「親心」は、どうにも揺らいでしまう。
「風邪移しちまうぞ」
「構い……ません、だから……!」
お願いです、と涼介が哀願する。
「わかった。わかったからもうあんなとこであんなこと、すんじゃねえぞ」
言い聞かせながら片手で涼介の双柔に触れると、涼介が「っ、あ……!」と声を裏返らせた。
(お父さんが触れてくれた……!)
二週間、欲しくて欲しくてたまらなかったその手の感触に、涼介は全身が満たされるのを感じた。
意地悪い文太の手は双つの柔らかなものを玩具の様に弄び、その奥の涼介の入り口を指先でなぞった。
ヒクつくそこを確かめるように指で遊ぶと、肉茎を扱く涼介の手を外し、扱いた。
「ああああ……ッ!!」
文太の手淫。
やはり涼介が、ずっとしてほしかったこと。涼介は腰を突き出し、はしたなく揺らめかせた。
「まだ体調がパーフェクトじゃねえからな……挿れるのはしてやらねえけど……ホラ、出しちまえ……」
文太は涼介の耳元でささやく様に言うと、赤くなった耳を軽くかんだ。
「……キス、して……ッ」
涼介が口付けを求めて舌を出した。文太がそれに答えた。
やはり久しぶりの、タバコと酒の味のする口付け。
涼介の両腕が、文太の背中に回り、ぎゅっと抱きしめた。


(お父さん……!)


大好きな味。
涼介の舌に絡みつく、慣れた舌。
鼻腔を突く、文太の匂い。
そして文太に扱かれ、文太の重みを全身に感じながら、涼介は盛大に射精した。


「……もうあんなトコでああいうコトはすんじゃねえぞ」
定位置の左側に涼介の頭を抱き寄せ、文太は言い聞かせた。その声はまだ嗄れていた。
「はい、」
その幸せな感覚はやはり二週間ぶりのもので、涼介は紅潮したままの頬で頷いた。
「それと、だ」
文太は、二つ目の注意をする。
「オレに嘘は付くな」
「――はい」
涼介はまた頷いた。その頭を抱き寄せる大きな手に、力がこもる。
「次、嘘ついたらもうシてやんねえからな……」
ポンポン、と頭を撫でてくる文太には、涼介のことなど何でもお見通しなのだ。
「わかりました……ごめんなさい、お父さん」
利口な証の広い額を文太の肩に押し当て、涼介は目を閉じた。


(どこででも盛るコイツもコイツだが……オレもコイツにゃ甘いのはどうにかしねえとな……)
すぐに求めてくる涼介にも困ったものだが、なんだかんだとそれに応えてしまう自分も自分だと文太は苦笑した。
「昔から言うだろ、嘘つきは泥棒の始まりだってな。……さて、風呂でも入るか」
よっこらせ、と起き上がろうとする文太の服を、涼介がぐいっと引っ張った。
「涼介、」
「……もう一回……」
「あ?」
下から見上げてくる、潤んだ切れ長の目には、まだ満足しきっていない性の欲望が満ちていた。
「もう一回、して下さい」
「……」
「ね、お父さん」
不埒な涼介の手が文太の手を取り、さっき文太に扱かれて達したばかりの涼介自身に導かれた。
若い雄は、さっきあれだけ盛大に放ったというのにもう硬くなっていた。
「今度は、後ろからされてイきたいんです……」
「……仕方ねぇな、」
文太は苦笑交じりに了承すると、涼介の上にまた覆いかぶさって、熱く堅い涼介自身を再び扱き始めた。
「あ、っは……」
眉根を寄せ、涼介が喘ぎだした。
(こんなことなら飲みに出る前にちゃっちゃと抱いてやった方が楽だったか……?)
喘ぐ涼介を見つめながら文太は後悔したが、もう後の祭りだった。




嘘つきは淫乱の始まり




(終)





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