卒業文集(後編)
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(side:松本)
藤原はボーっとしててボーイッシュで、だけど可愛い子だとは思っていた。
会って、まだそれほど経ってはいないけれど。
恋愛対象にするには彼女はちょっと年下過ぎたし、第一藤原に疚しい気持ちを抱くのはいけないことだと思っていた……なぜならこれから一年、オレと藤原は同じ県外遠征チームで、ドライバーとメカニックという「パートナー関係」でいなければいけないからだ。
『恋愛はご法度とは言わないけれど、今年一年はプロDに専念してくれ』と、涼介さんには最初に言われていた。
オレは『勿論ですよ』と二つ返事をした。
プロDの男連中は涼介さんをはじめ、全員がフリーだった……啓介さんに限って言えば、フリーになった、というべきか。
別に強制されたわけじゃない。この一年の活動にかけるためだ。
オレはクルマと写真に夢中で、ここ最近は女性にはてんで相手にもされなかったんだけど。
強制されてもされなくても、そんなことはないだろうと思っていた。
だから、藤原と一線を越えるなんて、考えもしなかった……告白を予感するまでは。
藤原に告白された時、ちょっと躊躇った。
涼介さんに『勿論ですよ』と返事をして、十日と経っていない。
だが……泣きそうな顔になっている藤原が、オレの心を抉った。
藤原の気持ちを受け入れていいものかどうか、短い時間、オレは迷った。
イエスかノーか……断ってプロDでぎこちなくなるなら、受け入れて、オレが大人の態度で自制しながらいい具合にリードしていけばプロDには悪影響を及ぼさない……そう思っていた。
そうだ。
最初はプロDのことを考えて、藤原にOKを出したんだ。
なのに。
藤原の柔らかい唇に触れた瞬間。
大人だと思っていた自分はとんでもないガキだと気付いた。
自制?
何のことだ?
シたい。
汚したい。
自分のものにしたい。
中坊並みの欲望が、心の奥底からぐわっと湧いてきた。
藤原はベッドの上、オレの愛撫に悶え、切ない声を上げていた。
初めてだという男との経験に、怯えの色は隠せない。ぎこちなくて、でもオレを受け入れようとするその姿は、とてもいじらしい。
そして、こんなにもいやらしい、そそる顔をする……掠れた喘ぎを漏らす。
……藤原は、本当に可愛かった。
めちゃくちゃに汚したくなるくらい、可愛かった。
オレの喉はからからに渇いていた。
心臓が早鐘を打ち、血液が体の中心に集まり、欲望は早く何とかしてくれと解放を願う。
「藤原、」
冷たく白い脚をゆっくり開かせる。
「いや……、」
今更のように藤原が脚に力を込め、僅かに抵抗する。
男を家に招きいれることの最終地点を分からないわけではないだろうが、実際その場面になると怖くなるんだろう。
クルマのように、踏み込めばどうにかなるものではない。
「駄目だ、」
抵抗より更に強い力でそれに抗う。
「んっ、」
ぐ、と力ずくで藤原の脚を開かせた。
「や……ッ」
短いスカートの中は、柔らかそうな太腿と、白に可愛らしい小花柄のショーツの三角があった。
そのクロッチの部分が、僅かに湿ってシミを作っている。布越しに、柔らかな恥毛が伺える。
「あんまり見ないで……っ」
拒否や否定はこんな時に煽りでしかないと知らない藤原は、自分でもきっとじっくり見たことのない場所をオレに見つめられ、両手で顔を隠した。
「恥ずかしいですッ……」
「わかってるさ。誰だって、最初は……」
両脚をオレの膝で押さえ、つぅ、とクロッチの部分に指を這わせた。
「うっ、」
「……ここはまだ……」
湿り気が指先に伝わる。何度かそこを指先で往復させた。その柔らかさは性の感触だ。
「子供みたいだな……」
男を知らないその場所は幼ささえ伺える。
オレは作業服の尻ポケットから、作業用に入れているカッターを取り出した。
「あ……!」
「ごめん、お気に入りか? ……もっと可愛いのをまた買ってあげるから……」
断って、チキ、と刃を二段階ほど出し、ショーツの脇の一番細いところに刃を引っ掛けた。
ぷつん、と可愛らしいショーツは拒みながら切れた。
「ああぁ……!」
反対側も同じようにすると、ショーツはただの破れた布になり、役目を果たさなくなった。
簡単に剥ぎ取ると、柔らかな恥毛に守られた藤原の一番大切な、そして一番いやらしい部分が現れた。
ピピッ、と電子音。そしてフラッシュ。
「いや……!」
オレはカッターを放り出し、カメラを構えてすかさずそこを撮った。
「まつもとさ……ッ」
藤原の手がレンズを押さえようとする。その手を捉える。
「そんなとこ、恥ずかしいですッ……!」
脚を閉じようにもオレの脚に押さえられ、それは叶わない。
「イヤじゃないよ、藤原。記念に撮っとくんだよ」
カメラをベッドに置き、オレはフッと笑った。
「記念……」
「ロストヴァージンの記念、だよ――」
――海のような味がする。
両脚を肩に担ぎ上げ、恥ずかしがる藤原の脚の間をねぶった。
これからオレを受け入れるその場所はまだ男を知らない。痛みを少しでも和らげ、性の悦楽をその身に刻むため。
「ぁ……ッ、ゃ……ぃあ……、」
さっきまで下着で護られ、誰にも見せることのなかった場所はオレによって広げられている。
襞を、快楽を齎す実を、最初は掠めるように手ごたえを確かめながら舌先で。
反応を見て、ゆっくりと舌の腹で。
小さな藤原の淫口……がヒクッと動き、白っぽい体液が脈打ちながら溢れてくる。
それは海のような味がした。藤原が感じている証拠で、いやらしさに輪をかけた。
「美味しいぞ、藤原」
「ッ……ぁ……ぁ、」
言うと、藤原は喘いで答えた。
もうすぐこのしょっぱい蜜をたらす場所に入るんだと思うと、オレの股間は痛いほどに堅くなる。
藤原は喘ぎながら布団を握り、いやいやをしたりのけぞったりしながら、初めてだろう快感に耐え、流され、包まれている。
「ぅ……ぁあ……ん、んっ」
皮をかむった実は最初、舌でそのまま舐めてやっていたが、皮を剥いてやり、堅くなった赤い中身を舌先でつつくと、反応が明らかに違う。
(感じるんだな……)
まだ不慣れな身体なら、ここが快感を覚えるには手っ取り早い。
じれったいほどチロチロと、わざと外して根元ばかりを舐めると、オレの舌を捉えようと腰がくねる。
「あ、あ……ッ」
「どうした? 藤原」
分かっているのにわざと聞いてやる。
「松本さん、そこ……」
「そこ? そこって、どこだ?」
意地悪く訊くと、そんな場所の名称を知らないわけじゃないだろうが、口にするのは恥ずかしいのか、頬を朱に染め、「今の場所です……
」と返事が返ってくる。
「……言ってみろよ。ク×××ス、って……」
「ク……×××ス……です……」
「そう。気持ちいいんだろう? 言ってみ? もっと舐めてくださいって……」
唾液と藤原の愛液で濡れた口元を拭いながら促してみる。
さっきまで何も知らなかったような子に、何てことをしているんだと心の中でもう一人の自分が叱っている気がする。
知り合ってまだそんなに経ってもいない子に。
幾ら好きですと言われたからって。
プロD最年長者としてお手本になるような振る舞いを、なんて考えていた筈だ――藤原のハチロクに乗って、文集の話を藤原がするまでは。
分かってるさ。
分かってる、そんなことは。でも――止まらない。止められない。
全開ダウンヒル、オレのブレーキはフットブレーキもサイドブレーキも故障したんだ。
止まらない――。
ほら、と藤原の手を、そこに添えさせた。
自分で開かせた。
「……舐めて、下さいッ……」
藤原はぎゅっと目を閉じ、震える声で言った。
オレはカメラをまた構えた。
眩しいフラッシュ。藤原がそこを自分で開く図を、撮った。今度は嫌がらなかった……舐められたい気持ちが勝っているんだろう。
「ナニを?」
「オ……オレの、ク×××ス……ッ!」
「初めてなのにこんなに気持ちよくなってる、藤原のやらしいク×××ス?」
嗜虐の趣味はなかったはずだ――なのに、そんな底意地の悪い台詞で藤原の反応を楽しんでいるオレがいる。
「藤原はいやらしいな……処女なのに、大人のオレを家に連れ込んで……」
指先で、藤原が開いた秘裂をつぅっとなぞると、赤い実に引っかかり、「んっ、」と彼女が跳ねた。
コクコクと頷く藤原が可愛くて、背筋がゾクゾクした。
望むままにまた舐めてやった。さっきより味が濃い。
オレの言葉に、いやらしい蜜を垂らしたせいか。
『まぁ、松本に限って間違いはないと思うが……藤原は一応、ああ見えて女だからな』
ハチロクの傍に立つ、ボーっとした藤原を見ながら涼介さんと交わした会話はほんの数日前のことなのに。
とても遠い昔の気がする。
『一応はヒドイだろ涼介。結構可愛いじゃないか』
史浩さんが苦笑していた。オレも苦笑した。
『大丈夫ですよ、涼介さん』
はは、と余裕を見せていたオレは何処にいったのか。
身体を裏返し、尻を高く上げさせた。
ロストバージンがバックからなんて、嫌だろうか……なんて気遣う優しさはどこかへ消えていた。
快楽を覚えて幾分か心がほぐれた藤原は、素直に尻を上げた。とても可愛らしい、小振りなキュッとしたいい尻だ。
作業服のズボンから取り出したオレ自身はもう限界に近く、一瞬でも早く発射したがっている。
「いくぞ、藤原……」
「ぁ……はい、」
枕に顔を埋め、布団をぎゅっと握る藤原に覆い被さり、さんざんねぶられた小さな入り口へとオレ自身の切っ先を宛がった。
「い・あ、ああああ……――!!!」
きっとそれは、快楽とは程遠い鋭い痛みだ。
藤原はのけぞって喘ぎではない声を上げる。逃れようとする。
「駄目だ!」
体重を掛けてそれを赦さず、上から押さえつけ、ぐっと一気に押し入る。
「ひぁぁあああっ!! いや、痛いッ……!」
「きつい……な、」
「う……あ……ぁあ……!」
それは締りがいいとか言うレベルではなく、ただきついだけで。処女を抱くのは初めてだったから、聞いていた以上の狭さに顔をしかめた。
いずれはこれがこなれて、いい具合に男を翻弄するんだろうが、今はただの狭路だ。
それはオレが、時間を掛けてゆっくりと、そうしていく……。
「んああぁッ……!」
「藤原、」
ぷち、と肉の裂けるような感触が接合部分から、した。
深く息を吸い込み、音を立てオレ自身を藤原の中に打ち付け始める。
「ああ、あ、……いぁあっ!」
遠慮なく腰を前後させると、藤原は痛みを堪える声を上げ、いやいやをし、自然とまなじりを流れていく熱い涙を頬に垂らした。
――忘れるなよ。
この子はオレが好きで、それこそ清水の舞台から飛び降りるくらいの決意で告白をして、そしてここにオレを招いたんだ。
――わかってるさ。
わかってる、そんなこと。でも……止まらねぇんだよ……。
心の中で、ついさっきまで確かにオレ自身を支配していた、『良識ある大人のオレ』がオレを諌める。
わかっている、そんなことは。
もっと優しくしろって言いたいんだろう。ああ、確かにそうだな。そうしなきゃな。
でも――出来ない。
「藤原」
体を起こし、藤原の形のいい尻を開き、またカメラを構える。
「や……だ……も……」
電子音。フラッシュ。シャッターを切る音。
眩しさが、藤原を包む。
後ろから撮った。
「そんな……撮らないでくださぁ……ッ」
藤原はもう涙声だった。
「こういうの、なんていうか知ってるか? 藤原」
「しらな……」
「ハメ撮り、っていうんだぜ……」
――背筋がゾクゾクする。
「記念だよ、これも」
藤原がオレの”女”になった――オレはそう言い、ファインダーを覗いたまま笑った。
そして夢中で撮り続けた。
オレと藤原が繋がっているその部分を。
そこからは赤い血が――破瓜の証が垂れ、布団を汚していた。
「拓海――もう寝たのか?」
階段を登る重い足音がし、襖の外から、藤原のオヤジさんらしい声がした。
飲みに行っていたのが帰宅したのだろう。ろれつがちょっと怪しい。
「……なんだ、寝てんのか」
返事がないのを寝ていると判断したのか、向かいの部屋の襖が開き、パンと閉まり――すぐに鼾が聞こえてきた。
「……藤原、」
オレの撒き散らした白濁と破瓜の赤で下半身を汚した藤原は、しゃくりあげながら頬を濡らしていた。
「ま……つもとさ……」
「ああごめん……中で出しちまったな……大丈夫だよ。責任は取るから――」
濡れた頬に手をやると、藤原が目を閉じた。
その顔には、僅かに絶望の色が滲んでいた。
藤原の卒業式を目前に、初遠征が迫っていた。
決まることはほとんど決まり、相手はどうみても格下。
あちらは駆け出しのチーム。
高橋兄弟と秋名のハチロクと聞いて飛びついてきた。どうやらメンバーも少なく名前を売りたいらしく、胸を借りるつもりだとかで最初の相手にしては手ごたえがなさ過ぎた。
そのせいか打ち合わせもどこか楽観的なムードで、食事を終えると藤原はその日刷り上がったばかりの卒業文集をプロDのみんなに見せていた
「この子可愛くね?」
「こっちの子の方がいいですよー」
「そっかぁ? ケンタお前派手なのスキだよなぁ」
表紙の裏に挟み込まれたクラス写真に、啓介さんとケンタが勝手に盛り上がっていた。
「藤原ぁ、集合写真くらいぼーっとすんなよ」
啓介さんにからかわれ、藤原は下を向き、皆は笑った。
「ところで、くだんのアンケートはどうなんだ?」
史浩さんが手を伸ばし、二人から文集を取り上げた。
「どれ……ああ、ここだな」
文集の後ろの方をめくった。
「……結構……大胆だな」
「なにが?」
眉をひそめた史浩さんに、啓介さんたちが慌ててのぞき込む。
「うわ……”好きな人はいますか”は百歩譲ってありとしても……”処女ですか” だってよ! 共学って大胆だな!」
啓介さんが大きな目をぱちくりさせた。涼介さんが「本当か?」と文集を奪った。
「……本当だ」
「だろ? すっげーなぁ、藤原の学校」
「……それは、文集係の子が……悪乗りして……」
藤原がしどろもどろに言い訳した。
「啓介。お前の学校だって文集酷かっただろ。座右の銘が夜露死苦だらけだったじゃねえか」
「だってオレの学校ドッカンだったんだぜー」
涼介さんと啓介さんの話に、ケンタが笑った。
アンケートはもう一つ……藤原があの日も出さなかったものが、あったらしい。
……次の集まりの時に、出したという。
”女の子に質問です。 処女ですか?”
「よくこんなの先生がお許し出したもんだ」
涼介さんがため息をつくと、史浩さんが「オレらの母校ならまずありえないな」と同意した。
「へぇ。イエスが85パーでノーが15か。……非処女が15パーもいるのか?」
涼介さんが首を傾げた。
「フカシじゃないですか? 渋高って割りと真面目でしょ?」
「藤原は当然85に入ってるよな?」
「当たり前だろ」
「藤原に失礼ですよ、啓介さん」
宮口と史浩さんが、啓介さんの頭を笑いながら叩いた。
「……はい」
藤原は小さく頷いた。
隣のオレはふっと笑って……テーブルの下、藤原の太腿にそっと手を置いた。
「……本当はノーにマルしたよな……?」
耳元で囁くと、藤原はコクン、と頷いた。
(終)
ぐりこ様リク『写真家松本さん・松拓・女拓海』
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